シェイクスピアはゲイだったという有力な説
文豪ウィリアム・シェイクスピアはゲイだったのではないか、とロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのアート・ディレクターが語った。
シェイクスピアのセクシュアリティについては長い間議論が続いてきた。
今回ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)のグレッグ・ドーランは、かの文豪はゲイだっただろう、と発言。
そのセクシュアリティは彼にアウトサイダーとしての視点をもたらし、作品に反映されているという。
ドーラン氏は、2012年からRSCのアート・ディレクターを務めている人物。
RSCはチャールズ皇太子が理事長を務め由緒ある劇団で、その名前の通り主にシェイクスピアの上演で知られる。
ドーラン氏によると、シェイクスピアがつくり出したゲイのキャラクターのセクシュアリティーを隠してしまうような演出はすべきではない、という。
シェイクスピアのセクシュアリティは、専門家の間でも長年議論の的となっていた。
ドーラン氏はBBCラジオの番組で、「私は今まで長年にわたって彼の演劇の仕事をしてきて、彼についてより深く理解してきました。その結果、彼の持っている視点はアウトサイダーの視点だといえるでしょう」
「その視点のおかげで、黒人の将軍、ヴェネチアのユダヤ人、エジプトの女王などの精神に入り込むことができたのです。このアウトサイダーの視点というのは、彼のセクシュアリティに関係があったのだと思います」。
シェイクスピアのセクシュアリティを理解するうえでカギになるのは、ソネットであるとドーラン氏は言う。
「シェイクスピアは1609年に出版した詩集に154編のソネットを書いていますが、そのうち126編が女性ではなく男性に向けて書かれているのです」。
ドーラン氏によると、専門の学者たちはヴィクトリア時代にこれらのソネットを「異性愛者の立場で見る」というプロセスを作り上げてしまった、という。
つまりシェイクスピアが「彼」としているところを、「彼女」として読み取る、というプロセスである。
「偉大なる国民的文豪が同性への愛情を抱いていたということは正当化されるものではなかったのです。そのためにこのプロセスが、ソネットを「浄化」することになったのです」
「私はシェイクスピアにはゲイのキャラクターが出てくることに気づいてきました。そして時にはそのキャラクターがゲイの男性として演じられていないことにも気づいていました。21世紀には、そのような(=ゲイとしてのキャラクターを無視するような)ことは受け入れられるべきではありません」。
例えば『ヴェニスの商人』のアントーニオは「明らかに若い男性であるバッサーニオに恋をしているのに、それがトーンダウンされているところがある」という。
彼らの恋愛は「僕たちはお互いをとても気に入っているんだ」という誤った描かれ方になってしまっていた。
「本当はこういうものではありません。明らかにゲイの男性をハッキリと描いたものです。21世紀の現代では、これを同性愛以外のものとして演ずるのは適切ではないのです」。
シェイクスピアのセクシュアリティについては、3年前にも著名な学者が議論を引き起こしたことがあった。
ブライアン・ヴィッカーズ卿は、ソネットの116番が「基本的に同性愛の文脈」で表現されているとしている。
ヴィッカーズ卿によると、シェイクスピアは男性が性的な表現を使わずに愛情表現ができるよう巧みな言葉づかいを用いている、と言っている。
またバーミンガム大学のシェイクスピア学者であるスタンリー・ウェルズ卿は、「シェイクスピアは必ずしもゲイではなかった」という。
「彼は18歳の時アン・ハサウェイと結婚し、その6か月後に娘のスザンナが誕生している。続いて男の子ハムネットと女の子ジュディスの双子も誕生している」
「しかし、彼は間違いなくバイセクシュアルであった。しかも自分でそれを意識していた。ソネットがその最も強力な証拠だ。ソネットの中には男性と女性の二人を相手にした三角関係について書かれたものがある。これは作り話にもとづくものだという人もいるが、実際は(バイセクシャルであることを)人に気づかれぬように書かれたものだと思う」。