チャールズ・ディケンズ『大いなる遺産』をめぐる9つの知識

// 1. 当初は「グロテスクな悲喜劇」をもくろんでいた 『大いなる遺産』はディケンズ作品の中でもあまり明るくない小説だが、もともとはユーモアのあるものを書こうとしていた。 友人あての手紙の中でディケンズはこう述べている。 「『二都物語』の時のよう…

「無人島に持っていきたい本」トップ10

// 「デザート・アイランド・ディスクス」は1942年から続くBBCラジオの長寿番組である。 もし無人島に行くとしたら何を持っていきますか?という質問に対し、各ゲストは録音された作品(音楽とは限らない)を8点、本を1冊、お気に入りアイテムを1つ、をそれ…

アルベール・カミュ『ペスト』 あらすじ

// 『ペスト』はアルジェリアのオランという町が舞台となっている。 ある年の4月、大量のネズミが路上に現れ死んでいくのが発見されるようになる。静かな恐怖が市民たちを襲い、地元新聞は対策の必要を訴え始める。その後しばらくたってから、役所はネズミの…

新ジャンルを確立した『フランケンシュタイン』の著者メアリー・シェリーとは?

// 1816年、19歳になろうとしていたメアリー・シェリー(1797~1851)はバイロン卿、将来の夫となるパーシー・ビッシュ・シェリー、医師ジョン・ポリドーリらとともに、スイスのレマン湖畔に遊びに出かけた。 前年のインドネシア・タンボラ火山の噴火が原因…

ジョージ・オーウェルが結核に感染したのは「スペイン内戦に参加中」

// ジョージ・オーウェルの死因については、結核による内出血であることはすでに知られていた。 しかし彼がどこで結核に感染したかについては、はっきりとしたことは分かっていなかった。 このたび、彼の書き残した手紙を科学者が検査することで、ある強力な…

トーマス・マン アメリカ亡命時代の住居が「Thomas Mann House」として復活

// トーマス・マンはヒトラーが政権を取った1933年、家族と一緒にスイスに亡命した。 さらにその後、居住地をアメリカに移す。 そして1941年、カリフォルニア州ロサンゼルスのパシフィック・パリセーズに住居を手に入れた。 マンは「7本の棕櫚と多くの柑橘類…

フローベール『ボヴァリー夫人』 "幻の英訳" とは?

// 『ボヴァリー夫人』は19世紀に書かれた小説であるが、現代のクリエーターたちにも大きな影響を与え続けている。ある批評家は、満たされずにいつも何かを追い求めているキャラクター、エンマ・ボヴァリーを「デスパレートな妻たち」の元祖であると評してい…

ウィリアム・ブレイク 没後191年にして初めて正式な墓石が設置される

ウィリアム・ブレイクは1827年8月12日、ロンドンで亡くなった。 彼の「墓」とされているものは、ロンドン市内のバンヒル・フィールド墓地に置かれている。 しかしそこには「この近くに眠る(Nearby lie)」と書かれている。 「ここに眠る(Here lie)」と書…

フローベール『ボヴァリー夫人』をめぐる5つのエピソード

// 1. 不倫の描写があまりにも直接的すぎて当時のフランスの読者たちに衝撃を与えた 『ボヴァリー夫人』は、エンマという農家出身の女性が彼女の父親を治療した医師シャルル・ボヴァリーと結婚するが、その後まもなく夫や夫婦での田舎生活に幻滅してしまう様…

トルストイ、フォークナー、ヘミングウェイ・・・世界の文豪たちが語る「執筆のためのアドバイス」

// トルストイ 「私はいつも午前中に執筆活動を行う。ルソーも朝起きて短い散歩を終えると、すぐに机に向かい仕事を始めていたことを最近になって知り、喜んだものだ。午前中は人の頭がとくにフレッシュな状態にある。最高のアイデアというものは、朝起きて…

マーク・トウェインは奴隷制廃止論者 or 支持論者?

// ヘンリー・デイヴィッド・ソローの研究家として知られているRobert Sattelmeyerは、「ボストン・ヴィジランス・コミッティ」(Boston Vigilance Committee)の名簿上に、ある名前を発見した。 それは「サミュエル・クレメンス」(Samuel Clemens)という…

サルトル未完の長編小説『自由への道』 その ”完成” までの道のり

// 1938年4月、ジャン=ポール・サルトルは小説『嘔吐』を発表した。 その3か月後の7月、彼はシモーヌ・ド・ボーヴォワールにこう書き送っている。 私は突然次の小説の主題、全体の構成、題名を発見した。主題は「自由」だ。 “次の小説” のもともとの題は『Lu…

フィリップ・ロス 20世紀後半のアメリカを代表する大作家の足跡を追う

// フィリップ・ロスは1933年、ニュージャージー州ニューアークに生まれた。ニューアークはのちに彼の多くの作品の舞台となった場所である。 両親はヨーロッパからの移民で、中産階級のユダヤ人であった。 ロスはシカゴ大学で英文学の修士課程を修め、短編小…

国家や教会からの弾圧にもかかわらず多くの支持者をひきつけた「トルストイ主義」

// 1870年代、トルストイは『アンナ・カレーニナ』の雑誌連載および単行本出版により、大きな成功をおさめた。 その一方で、彼は自分の貴族出身の家柄や作家としての成功によって得た富や名声を快く感じなくなり、悩み始めていた。 トルストイは心理的・精神…

ピーター・ラビットだけではない ビアトリクス・ポターの知られざる一面

// ビアトリクス・ポターは、「ピーター・ラビット」や「フロプシー・モプシー・カトンテール」などのキャラクターを生み出し、数多くの絵本を書いた作者として知られている。 しかしポターの活躍は、こうした絵本の世界だけではなかった。 ポターは1866年に…

アレクサンドル・デュマ 名声の頂点を象徴した「モンテ・クリスト城」

// 「モンテ・クリスト城」は3階建てのネオルネッサンス様式の建物である。 アレクサンドル・デュマはこの建物を「地上の楽園」と呼んでいた。 1844年、『三銃士』を発表したデュマはその名声の頂点にいた。 そんな彼は、パリから西へ20キロのところにあるサ…

シャーロット・ブロンテをもっとよく知るための10の知識

// 1. 5歳の時に母親を亡くす ブロンテ姉妹の母親マリア・ブランウェル・ブロンテは1821年、卵巣腫瘍(または産後の感染症の説もある)で亡くなった。38歳の若さだった。後には夫のパトリック・ブロンテと6人の子供たちが残された。 マリアの死から数年後、…

ヘミングウェイが作家を目指す人に推薦した16冊の本

// 20世紀のアメリカを代表する作家のひとりであるアーネスト・ヘミングウェイが、自分をしたっている若い作家に対し文章を書く方法についてアドバイスしたことがった。 その時「これらの本を読まなくては勉強が終わったとは言えない」といって16冊のの本を…

トーマス・マンが1930年代にわずか3回の夏を過ごした別荘の話

// 1929年の夏、トーマス・マンはバルト海に面するクルシュー砂州の田舎風景に心を奪われた。 そしてこの地にある漁村「ニダ」に、マンは別荘を建設することになる。 しかしマンとその家族がこの別荘で過ごした夏は3回だけであった。 ナチによる迫害のために…

オスカー・ワイルド 獄中の読書リスト

// 1895年、オスカー・ワイルドは “男色” を理由に2年間の重労働の刑を言い渡された。 最初はニューゲート、次にペントンヴィル、そしてワンズワースの刑務所と、収監される刑務所は変わってゆき、最後はレディングの刑務所にたどり着く。 当初ワイルドは本…

カミュと女優マリア・カザレスの往復書簡集

// 2017年11月、『Correspondence (1944-1959)』が出版された。 作家アルベール・カミュと女優マリア・カザレスとの往復書簡集である。 カミュは1944年からカザレスと愛人関係にあり、二人がやり取りしていた多くの手紙が残されていた。 手紙は1959年が最後…

イギリス・ロマン派詩人バイロンの自由でかなり放埓な人生

// バイロンの本名はジョージ・ゴードン・ノエルという。 1788年1月22日、ロンドンに生まれた。 父親は彼が3歳の時に死去している。 1798年、従祖父が亡くなると「第六代バイロン男爵」としてその遺産を相続することになった。 バイロンは少年時代はスコット…

スタンダール『赤と黒』のモデルとなった実在の人物と事件とは?

// スタンダールの『赤と黒』は、実在する人物とその人物の引き起こした事件をもとに書かれた小説である。 実在する人物とは「アントワーヌ・ベルテ」という男で、彼が『赤と黒』のジュリアン・ソレルのモデルとなった。 ベルテはフランスのグルノーブルで学…

グーグル・ドゥードルに登場したヴァージニア・ウルフってどんな人?

// 1月25日にグーグル・ドゥードルで登場したヴァージニア・ウルフは、現在ではイギリスで最も優れた小説家の一人と目されている。 そしてその影響は今日の文化・芸術の世界にも広く及んでいると言えるだろう。 生涯 ヴァージニア・ウルフは1882年1月25日、…

ノーム・チョムスキーが2010年に予想し、恐れていた "トランプ大統領の誕生"

// 2010年4月、ノーム・チョムスキーはアメリカの将来について暗い見通しを示していた。 しかし当時はその発言は大きく注目されることはなかった。 アメリカでドナルド・トランプが大統領となった現在、チョムスキーのあの発言は残念ながら正しかったという…

パスカルが『パンセ』に記した「相手を説得する方法」

// ブレーズ・パスカルは、言わずと知れた17世紀のフランスの哲学者・数学者である。 彼の書き残した文章の断片を集めた『パンセ』には、今を生きる私たちにとって役に立つあるコツが示されている。 それは「相手の考えをあらためさせる方法」。 パスカルは…

『パディントン』原作者マイケル・ボンド 亡くなる半年前のインタビュー「いつも朝9時には机に向かっているよ」

// 以下は2016年12月24日、イギリスの新聞「The Guardian」のウェブサイトに掲載されたマイケル・ボンドのインタビューである。 www.theguardian.com 『パディントン』の原作者であるボンド氏は2017年6月27日に91歳で亡くなっているが、半年前のこの記事でも…

ドストエフスキーってこんな人 あらためて学ぶ10の予備知識

// 25歳で最初の本を出版した ドストエフスキーの人生は恵まれたスタートを切ったといえる。裕福な家庭に生まれ育ったため、若いうちにしっかりとした教育を受けてきた。しかし作家になるための勉強を積み重ねていたわけではなかった。陸軍工兵学校に入学し…

アルベール・カミュ『異邦人』 あらすじ

// 母の死の知らせを受けたムルソーは養老院に向かい、葬儀に出席する。しかし彼は親が死んだことに対する悲しみをまったく表さない。母親の遺体を見たいかと問われても断り、さらには棺桶の前でタバコを吸いコーヒーを飲み始める。自分の感情を表に出すこと…

アルベール・カミュ『異邦人』についての豆知識

// 『異邦人』はフランスの作家アルベール・カミュによる1942年の小説である。カミュの思想である「不条理」と「実存主義」をテーマとした小説であるとみなされている(カミュ本人は自身の哲学が「実存主義」と呼ばれることには反発している)。 小説の主人…