イギリス

バートランド・ラッセルが残した「愛は賢く、憎しみは愚か」というメッセージ

イギリスの哲学者・数学者バートランド・ラッセルが生まれたのは1872年、亡くなったのが50年前の1970年。 享年97歳という長寿だった。 もともと数学者として出発したラッセルは、それまで受け入れられてきた論理体系の矛盾を発見し、それは「ラッセルのパラ…

ダニエル・デフォー『ペストの記録』にも「無症状の感染者」の問題が取り上げられていた

1665年、ロンドンは疫病の大規模な流行に襲われていた。 「ロビンソン・クルーソー」の生みの親であるダニエル・デフォーは、そのころのロンドンの様子を『ペストの年の日記』に書き残している。 フィクションではなく、詳細な研究に基づいたいわゆるドキュ…

ジョージ・オーウェルの駆け足の46年間を簡単にまとめた

// ジョージ・オーウェルの本名はエリック・アーサー・ブレアといい、1903年6月25日にインドの東部に生まれた。 父親はイギリス高等文官だった。 イングランドに戻って教育を受け、イートン校に進学。 その後インド警察に入り、当時イギリス領だったビルマで…

ジョージ・オーウェル『1984年』あらすじ

一般党員の一人であるウィンストン・スミスは「真理省」の記録部門で働き、「歴史の書き換え」という職務を担当している。 ウィンストンはビッグ・ブラザーに支配された社会に満足しておらず、少なくとも頭の中だけでも逃れようと、日記を書き始める。 日記…

T.S.エリオット ミュージカル『キャッツ』の原作は友人の息子向けに書かれた詩集

『キャッツ - ポッサムおじさんの猫とつき合う法』は詩人T.S.エリオットによる詩集。 シリアスな詩集ではなく、子供向けに面白おかしく書かれた作品だった。 シリアスな詩人による、ユーモラスな作品 19世紀のイギリスで活躍した画家のエドワード・リアはユ…

ディケンズ念願の大邸宅 その支払いのために始めた「朗読ツアー」

1856年3月、チャールズ・ディケンズはケント州のロチェスターに不動産を購入した。 「ギャッズ・ヒル」と呼ばれるこの大邸宅は1,700ポンド(当時)。 この大金を支払うために、ディケンズは「公開朗読ツアー」というアイデアに行き着いた。 各地をまわり、自…

ブロンテ姉妹を描いたTVドラマ『トゥ・ウォーク・インビジブル』

『トゥ・ウォーク・インヴィジブル(To Walk Invisible)』(2016年)はイギリスの作家、ブロンテ三姉妹を題材にしたテレビドラマである。 ブロンテ姉妹については、イギリスの片田舎に暮らしながら文学作品を書いた3人であるということはよく知られており、…

労働者階級の味方だったディケンズが反対したイギリスの「窓税」

ほとんどの建物に設置されている「窓」だが、これが光や外気を屋内に取り入れるための “ぜいたく品” であり、窓のある部屋に暮らすことがある種の ”特権” だった、というのは、現代に暮らす私たちには想像できないことである。 政府はその特権に課税するよう…

オースティンからローリングまで 文豪16人が愛用した文房具あれこれ

どの世界のプロたちも自分の「商売道具」には強いこだわりを示す。文学の世界もまたしかり。世界の文豪たちはどんな文房具を愛用していたのだろうか。 ウラジミール・ナボコフ ナボコフはインデックスカードに自分の小説の筋書きを描く際は、鉛筆「Eberhard …

詩人ロバート・バーンズを祝う「バーンズ・ナイト」とは?

// 「バーンズ・ナイト」(Burns Night)とはスコットランドの詩人ロバート・バーンズを祝う日のことである。 1796年にバーンズが亡くなった後、彼の友人数人が故人をしのんでディナーの集いを開くことになったのがその始まりだった。 このきわめてプライベ…

イギリスの詩人・版画家 ウィリアム・ブレイクについて知りたい

// ウィリアム・ブレイクは同時代の文学・美術家たちからは正気ではない人だと思われ、ほとんど見捨てられていた。 しかし空想的・幻想的な詩人であり版画家であるブレイクは、現在はイギリス文学・美術に最も貢献した人物の一人とみなされている。 ブレイク…

チャールズ・ディケンズ『大いなる遺産』をめぐる9つの知識

// 1. 当初は「グロテスクな悲喜劇」をもくろんでいた 『大いなる遺産』はディケンズ作品の中でもあまり明るくない小説だが、もともとはユーモアのあるものを書こうとしていた。 友人あての手紙の中でディケンズはこう述べている。 「『二都物語』の時のよう…

新ジャンルを確立した『フランケンシュタイン』の著者メアリー・シェリーとは?

// 1816年、19歳になろうとしていたメアリー・シェリー(1797~1851)はバイロン卿、将来の夫となるパーシー・ビッシュ・シェリー、医師ジョン・ポリドーリらとともに、スイスのレマン湖畔に遊びに出かけた。 前年のインドネシア・タンボラ火山の噴火が原因…

ジョージ・オーウェルが結核に感染したのは「スペイン内戦に参加中」

// ジョージ・オーウェルの死因については、結核による内出血であることはすでに知られていた。 しかし彼がどこで結核に感染したかについては、はっきりとしたことは分かっていなかった。 このたび、彼の書き残した手紙を科学者が検査することで、ある強力な…

ウィリアム・ブレイク 没後191年にして初めて正式な墓石が設置される

ウィリアム・ブレイクは1827年8月12日、ロンドンで亡くなった。 彼の「墓」とされているものは、ロンドン市内のバンヒル・フィールド墓地に置かれている。 しかしそこには「この近くに眠る(Nearby lie)」と書かれている。 「ここに眠る(Here lie)」と書…

ピーター・ラビットだけではない ビアトリクス・ポターの知られざる一面

// ビアトリクス・ポターは、「ピーター・ラビット」や「フロプシー・モプシー・カトンテール」などのキャラクターを生み出し、数多くの絵本を書いた作者として知られている。 しかしポターの活躍は、こうした絵本の世界だけではなかった。 ポターは1866年に…

シャーロット・ブロンテをもっとよく知るための10の知識

// 1. 5歳の時に母親を亡くす ブロンテ姉妹の母親マリア・ブランウェル・ブロンテは1821年、卵巣腫瘍(または産後の感染症の説もある)で亡くなった。38歳の若さだった。後には夫のパトリック・ブロンテと6人の子供たちが残された。 マリアの死から数年後、…

オスカー・ワイルド 獄中の読書リスト

// 1895年、オスカー・ワイルドは “男色” を理由に2年間の重労働の刑を言い渡された。 最初はニューゲート、次にペントンヴィル、そしてワンズワースの刑務所と、収監される刑務所は変わってゆき、最後はレディングの刑務所にたどり着く。 当初ワイルドは本…

イギリス・ロマン派詩人バイロンの自由でかなり放埓な人生

// バイロンの本名はジョージ・ゴードン・ノエルという。 1788年1月22日、ロンドンに生まれた。 父親は彼が3歳の時に死去している。 1798年、従祖父が亡くなると「第六代バイロン男爵」としてその遺産を相続することになった。 バイロンは少年時代はスコット…

グーグル・ドゥードルに登場したヴァージニア・ウルフってどんな人?

// 1月25日にグーグル・ドゥードルで登場したヴァージニア・ウルフは、現在ではイギリスで最も優れた小説家の一人と目されている。 そしてその影響は今日の文化・芸術の世界にも広く及んでいると言えるだろう。 生涯 ヴァージニア・ウルフは1882年1月25日、…

『パディントン』原作者マイケル・ボンド 亡くなる半年前のインタビュー「いつも朝9時には机に向かっているよ」

// 以下は2016年12月24日、イギリスの新聞「The Guardian」のウェブサイトに掲載されたマイケル・ボンドのインタビューである。 www.theguardian.com 『パディントン』の原作者であるボンド氏は2017年6月27日に91歳で亡くなっているが、半年前のこの記事でも…

1955年7月の新聞が報じる「ラッセル=アインシュタイン宣言」

// 以下は、イギリスの新聞「The Guardian」が1955年7月11日に報じた「The Russell-Einstein peace manifesto」のアーカイヴ記事である。 www.theguardian.com アルベルト・アインシュタインは亡くなる数日前、バートランド・ラッセル卿とともにある宣言に署…

ディケンズの作品に影響を与えた3人の女性たち

// チャールズ・ディケンズがまぎれもない天才作家であることは誰もが認めるところである。 しかし同時に、彼はつねに傷ついた心を癒し続けながら、報われない愛を求め続けた人物でもあった。 元をたどると彼の父親ジョン・ディケンズからそれは始まっていた…

詩人ジョン・キーツの生涯について知りたい

// キーツは25歳という若さで亡くなった。 それにもかかわらず、彼はイギリスの最も偉大な詩人のひとりであり、ロマン主義の重要人物とみなされている。 若く、美しく、運命に翻弄された詩人の典型的な存在としてイギリス文学にその名を残しているのである。…

シェイクスピアはゲイだったという有力な説

文豪ウィリアム・シェイクスピアはゲイだったのではないか、とロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのアート・ディレクターが語った。 シェイクスピアのセクシュアリティについては長い間議論が続いてきた。 今回ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC…

ディケンズが残したジャーナリズムの仕事

2017年5月10日の産経ニュースで、ロンドンにある「チャールズ・ディケンズ博物館」で開催されている特別展について紹介されていた。 www.sankei.com 小説家であるディケンズとは別の、記者としてのディケンズに焦点をあてた展覧会。 イギリスの新聞「The Gua…