スタンダール『赤と黒』のモデルとなった実在の人物と事件とは?

 

 

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スタンダールの『赤と黒』は、実在する人物とその人物の引き起こした事件をもとに書かれた小説である。

 

実在する人物とは「アントワーヌ・ベルテ」という男で、彼が『赤と黒』のジュリアン・ソレルのモデルとなった。

 

ベルテはフランスのグルノーブルで学ぶ神学生だった。

 

ミシュー一家の家庭教師として雇われたベルテは、その家の夫人と恋愛関係に陥るが、これが原因でミシュー家の家庭教師の職を失ってしまう。

 

しかし、ベルテは同じことを繰り返す。

 

ふたたび他の家に家庭教師として迎えられた彼は、今度は一家の娘であるヘンリエットを誘惑するのである。

 

しかし前の雇い主であり愛人であったマダム・ミシューからの手紙がこの新しい家庭教師先に届き、結局ベルテは仕事も恋も再び失うこととなった。

 

これを知ったベルテは怒りを抑えきれず、マダム・ミシューを逆恨みしだす。

 

そして教会のミサまでついて行き、その教会内で彼女に向かって発砲する。

 

しかしその弾丸はミシュー夫人の命を奪うことはなく、またその直後に試みた彼の自殺も失敗に終わった。

 

赤と黒』の中でジュリアン・ソレルは、自分のかつての愛人が彼に代わって引き金を引こうとするのを止め、裁判では彼自身の責任を主張する。

 

しかしベルテはジュリアンとは異なり、法廷では異常な弁護を試みたと伝えられている。

 

「抑えることのできない愛の混乱」が彼を追い込んだと主張した。

 

しかし検察側はこれに反論し、「すべてはベルテの抱き続けた野心に満ちた夢によるものだ」と主張。

 

「彼は、自分のプライドが描きだした目標には到達できそうもない、ということを理解するのが遅すぎました。希望を奪われた被告人は、そのまま消えていくしかありません。しかし彼の怒りは、彼が自分のために掘った墓穴に犠牲者までも引きずって行こうとしたのです」。

 

1828年2月、アントワーヌ・ベルテはグルノーブル市内の広場でギロチン刑に処せられた。

 

そして1830年11月、同じくグルノーブル出身のスタンダールは、ベルテにそっくりな「ジュリアン・ソレル」を世に送り出したのである。

 

 

 

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