スコット・フィッツジェラルドが薦める「22冊の本」
1936年は、スコット・フィッツジェラルドにとって最も暗い年であったかも知れない。
心の病に苦しんでいた妻のゼルダを近所にあるハイランド病院に移し、彼自身はアシュヴィルのグローヴ・パーク・インというホテルに滞在し始めた。
当時、フィッツジェラルドが抱えていた経済問題および飲酒問題は危機的な状態におちいっていた。
その夏にはホテルにあるプールに飛び込んだ際、肩の骨を折る大けがをしている。
さらにその後、自殺未遂で発砲事件まで起こしてしまう。
この一件があって以来、フィッツジェラルドの滞在していたホテル側は「看護師の付き添いがなければ滞在をお断りします」と通達してきた。
彼はやむを得ず看護師ドロシー・リチャードソンの付き添いのもと、ホテルに滞在し続けることになる。
リチャードソンの任務はフィッツジェラルドのそばに付き添い、彼が飲みすぎないように見張っている、というものだった。
社交性に富んだフィッツジェラルドは リチャードソンと友人関係を築き、彼女に「読むべき本22冊」を教えた。
これはそのときリチャードソンが書き取ったメモである(フィッツジェラルドによって書かれたものではない)。
このリストの内容には偏りがあるようにも見える。
例えばシェイクスピアが一冊も含まれていない。 ジェイムズ・ジョイスもない。
その一方でノーマン・ダグラスやアーノルド・ベネットは含まれている。
おそらく当時「Modern Library」というシリーズで読むことが出来る文学作品に限定して選んでいるのではないか、と見られている。
リチャードソンはこのページのトップに、「これらは読まなくてはいけないとスコットが考えている本です」とメモしている。
シスター・キャリー(セオドア・ドライサー)
イエスの生涯(エルネスト・ルナン)
人形の家(ヘンリック・イプセン)
ワインズバーグ・オハイオ(シャーウッド・アンダーソン)
二人の女の物語(アーノルド・ベネット)
マルタの鷹(ダシール・ハメット)
モーパッサン短編集
An Outline of Abnormal Psychology(ガードナー・マーフィー編)
チェーホフ短編集
The Best American Humorous Short Stories(アレクサンダー・ジェサップ編)
勝利(ジョゼフ・コンラッド)
天使の反逆(アナトール・フランス)
オスカー・ワイルド戯曲集
花咲く乙女たちのかげに(マルセル・プルースト)
ゲルマントのほう(マルセル・プルースト)
スワン家のほうへ(マルセル・プルースト)
南風(ノーマン・ダグラス)