作家125人が選んだ「世界最大の文学作品 トップ10」
フランシス・ベーコンはかつて「味わうべき本、むさぼり読むべき本というものがある。しかし、じっくりと噛みしめ、しっかりと消化するべき本はほんのわずかだ」といった。
しかし私たちの時間は限られており、その一方で読む必要のない本を避けつつ「じっくりと噛みしめ、しっかりと消化するべき本」を見つけ出すにはどうしたらいいだろうか?
2000年代初頭、アメリカのジャーナリスト、ジョン・ペーダー・ゼインが125名の有名な著述家たちに「過去に書かれた小説、短編集、戯曲、詩歌の中で、最も優れていると思われる10作品をランキング形式でリストアップしてほしい」というリクエストを出した。
この125名はスティーヴン・キング、デヴィッド・フォスター・ウォレス、ピーター・ケアリー、ケイト・アトキンソン、トム・ウルフ、カール・ハイアセン、ノーマン・メイラー、アニー・プルーといった現代文学の旗手たちだった。
ランキング形式で提出されているものにポイントを付けてゆき、それぞれの作品の得点が算出され、総合ランキングがゼインの著書『Top Ten: Writers Pick Their Favorite Books』に発表された。
The 10 Best Books of All Time
- 1. 『アンナ・カレーニナ』レフ・トルストイ
- 2. 『ボヴァリー夫人』ギュスターヴ・フローベール
- 3. 『戦争と平和』レフ・トルストイ
- 4. 『ロリータ』ウラジミール・ナボコフ
- 5. 『ハックルベリー・フィンの冒険』マーク・トウェイン
- 6. 『ハムレット』ウィリアム・シェイクスピア
- 7. 『グレイト・ギャッツビー』スコット・フィッツジェラルド
- 8. 『失われた時を求めて』マルセル・プルースト
- 9. 『チェーホフ短編集』アントン・チェーホフ
- 10. 『ミドルマーチ』ジョージ・エリオット
1. 『アンナ・カレーニナ』レフ・トルストイ
感性と反抗心の強いアンナ・カレーニナと若々しい官吏ヴロンスキー伯爵との不倫を描いた長編小説。アンナは冷え切った結婚生活を拒むことで、社会の欺瞞に自ら飛び込んでいくことになる。
2. 『ボヴァリー夫人』ギュスターヴ・フローベール
シャルル・ボヴァリーと結婚したエマは、恋愛小説や女性雑誌に書かれている豪華で情熱的な生活を送るものだと想像していた。しかしシャルルは退屈な田舎医者で、地方の生活は彼女が望んでいたロマンチックな興奮とはあまりにもかけ離れたものだった。
3. 『戦争と平和』レフ・トルストイ
ナポレオン率いるフランス軍がロシアに侵入した時代を背景に、複数のロシア貴族の物語を織り交ぜて描くトルストイ最大の小説。
4. 『ロリータ』ウラジミール・ナボコフ
年老いていくハンバートが妖精のような美少女ドロレス・ヘイズに対して執拗で悲劇的な情熱を抱く様子を描いた、戦後アメリカ文学の傑作。
5. 『ハックルベリー・フィンの冒険』マーク・トウェイン
ミシシッピー川流域で生き生きと暮らす少年が、逃亡奴隷とともに川下りの冒険に出かける様子を描いた19世紀アメリカ文学の傑作。
6. 『ハムレット』ウィリアム・シェイクスピア
ハムレットが彼の父親を殺害したクローディアスに復讐する悲劇の傑作。シェイクスピアの代表作であるとともに、もっとも複雑な作品の一つでもある。
7. 『グレイト・ギャッツビー』スコット・フィッツジェラルド
デイジー・ブキャナンへの思いを抱き続けている、若く謎めいたジェイ・ギャッツビーを中心に展開する20世紀アメリカ文学の傑作。
8. 『失われた時を求めて』マルセル・プルースト
話者の少年時代の回想から始まり、青年時代の体験を経て、19世紀末から20世紀初めまでのフランス社交界の生活を描く。失われた過去とその意義を探求した膨大な長編小説。
9. 『チェーホフ短編集』アントン・チェーホフ
帝政ロシア末期の時代を生きたアントン・チェーホフの短編集。当時のロシアの様子が、興味をそそる筋書きと独特のスタイルで見事に描かれている。
10. 『ミドルマーチ』ジョージ・エリオット
架空の町「ミドルマーチ」の1829~32年までを舞台として、女性の社会的地位や結婚生活などをテーマに数多くの登場人物が交わっていく様子を描いた。ヴィクトリア時代のイギリスを代表する傑作。
The 10 Greatest Authors of All Time
またこの『Top Ten: Writers Pick Their Favorite Books』という本には、各作品の獲得ポイントを集計し、その合計ポイントから「最も優れた作家」のトップ10ランキングも発表されている。
1. レフ・トルストイ – 327点
2. ウィリアム・シェイクスピア– 293点
3. ジェイムズ・ジョイス – 194点
4. ウラジミール・ナボコフ – 190点
5. フョードル・ドストエフスキー– 177点
6. ウィリアム・フォークナー– 173点
7. チャールズ・ディケンズ– 168点
8. アントン・チェーホフ – 165点
9. ギュスターヴ・フローベール – 163点
10. ジェーン・オースティン– 161点
作品のトップ10でも作家のトップ10でもトルストイの存在感がとても大きい。
一方でドストエフスキーやディケンズなどのように、傑作とされる作品が多い作家の場合はポイントがばらけてしまうせいで、作家としての総得点は大きいが個々の作品の獲得点が大きくならないという傾向があるようだ。
あくまで一つのガイドとして参考にするのものだと思う。