ジョン・アップダイクから若い作家へのアドバイス「一日一時間書きなさい」

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2004年6月、アメリカの作家ジョン・アップダイク(1932~2009年)はアカデミー・オブ・アチーブメント(若い世代の活動支援を行う非営利団体)のインタビューに応じた。

 

広範囲に及ぶ話題の中でアップダイクは、まだ活動を始めたばかりの作家へのアドバイスを求められる。

 

「若い作家にアドバイスを与えることは躊躇してしまいます」とアップダイクは言う。

 

「伝えられることに限界があるからです。ミュージシャンやアーティストのように、マスターしなければならない技術が決まっているわけではないのです」。

 

そのうえで、彼は「一日一時間書く」「興奮する本を読む」「金持ちを目指すな」という助言を述べている。

 

 

 

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若い作家には、単にこう伝えたいと思います。

 

「実際に仕事をする習慣を築き上げなさい。あなたが忙しい生活を送っていたとしても、たとえば一日一時間、もしくはそれ以上を、書くことに費やしなさい」。

 

非常に優れた作品のいくつかは、この「1日1時間」法で書かれています。

 

私のお気に入りの作家のひとりであるヘンリー・グリーンは、本業が実業家でした。

 

彼は会社を経営していて、家に帰ってきて肘掛け椅子に座って1時間だけ書いていました。そして素晴らしい本を書き上げているのです。

 

真剣に自分のノルマを設定してみてください。

 

どこかで理想の読者とコミュニケーションをとり、自分の書いたものが活字になるよう考えてみなさい。

 

自分を作家と名乗っているだけで満足したりせず、また自分の作品を載せてくれないガサツな出版業者たちに愚痴をこぼしてはいけません。

 

私たちはまだ資本主義の国であり、執筆はどうしても資本主義的なビジネスではありますが、生計を立てて聴衆に訴えかけることは決して罪ではないのです。

 

また「自分を興奮させるものを読め」というのも私からのアドバイスです。

 

たとえ真似できなくても、そこから学ぶことができるでしょう。

 

私が読んだミステリー小説はすべて、プロットを緊張感のある状態に保ち、前進する、もしくはそれと同じような緊張感があると読者に思わせ、糸がピンと張られていると感じさせる - そうしたことについて、何かしらの教訓を与えてくれたように思います。

 

もう一つのアドバイスは、お金持ちになろうとしてはいけない、ということです。

 

お金持ちになりたければ、投資銀行に入るか弁護士になるべきです。

 

しかしその一方で、私はこのような大きな国では、そして(英語という)多くの人が使う言語では、読者を楽しませ、読者に何かを伝えることを好み望んでいる人たちが、それ(執筆)で生活できるべきだとも考えたいのです。

 

アップダイクと私 ---アップダイク・エッセイ傑作選

 

 

 

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