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ディケンズが残したジャーナリズムの仕事

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2017年5月10日の産経ニュースで、ロンドンにある「チャールズ・ディケンズ博物館」で開催されている特別展について紹介されていた。

 

www.sankei.com

 

小説家であるディケンズとは別の、記者としてのディケンズに焦点をあてた展覧会。

 

イギリスの新聞「The Guardian」でもこの展覧会について取り上げており(2017年5月8日)、現在のロンドンも、ディケンズが過ごしたヴィクトリア時代と根本的には同様の問題を抱えている、という興味深い指摘がなされている。

 

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ヴィクトリア朝時代のロンドン。

 

深夜に町中を歩いていた人は、最も有名な作家とばったり顔を合わせる可能性があった。

チャールズ・ディケンズ不眠症うつ病を払いのけるため、町中を歩き回っていた。

しかし同時に、自分がかかわっていた雑誌の記事につかえる材料をかき集めてもいたのである。

 

その散歩の途中でディケンズは、劇場や聖堂、店やパブ、べスレム精神病院、マーシャルシー監獄などの前を通って行った。

マーシャルシー監獄には、かつてディケンズ父親債務超過の罪で服役していたこともあった。

 

家屋すらないひどい状態に対してディケンズが怒りの矛先を向けた当時から、150年以上たった現在。

ディケンズがかつて住んでいた家屋は「ディケンズ・ミュージアム」となっている。

 

 

ディケンズのころと変わらない社会状況】

この博物館のディレクターを務めるシンディさんは、毎日自宅から職場のある「Doughty Street 48番」までの4マイル(約6.4km)を歩いて通勤している。

この通勤ウォーキングのあいだに、少なくとも20名のホームレスを目にするという。

「世界で最も裕福な都市のひとつで目にする、心を砕かれるような光景です」。

 

ディケンズの時代に貧困と路上生活の割合が上昇していたが、それはここ10年間のロンドンも同じだ。

路上生活、失業、精神疾患、教育などの問題が今でもイギリスには残っているのだ。

 

シンディさんは「Dickensian」(ディケンズ風の、ディケンズ小説のような)という言葉が使われたときに作動するアラート機能を携帯に設定しているが、一日に10回以上作動するという。

 

ディケンズの作品を演じてきた俳優のサイモン・キャロウ氏は「ウェスト・エンド(ロンドンの劇場街)でクリスマスショーをしていた劇場から出てくると、建物の入り口には持ち物を抱え込んで路上で暮らしている人たちがいるんです。ディケンズのころから何も変わっていないんですよ」と語る。

 

 

【雑誌記者・編集者としても大成功】

ディケンズがアメリカでジャーナリストたちに向けて行ったレクチャーの中で、彼は自分の成功は「まだ駆け出しだったころにやっていた、厳しい記事執筆の有益なトレーニング」のおかげだ、と語っている。

 

バッキンガム大学で英文学を講じるジョン・ドリュー教授は、ディケンズの残した大量のジャーナリズムの文章を編纂してきた専門家。

 

教授は、ディケンズのジャーナリズムの仕事は小説に比べると格段に読まれていないことは認めつつも、小説よりも好きだという。

「躍動感があり、直接的で、素晴らしく書かれています。ウィットや皮肉もふんだんに交えられています。またディケンズが小説でやりがちだった過度の練り込みやセンチメンタリズムに陥らずに書かれているのです」。

 

ディケンズの書いた記事は「Household Words」や「All the Year Round」といった自身が発行していた雑誌に発表され、最高で発行部数30万部を誇った。

ディケンズはこの成功で、現在の年間20万ポンド(約2,800万円)に相当する収入を得ている。

 

「彼は自分の発行していた雑誌に「The Shadow」というタイトルを付けたがっていました。影というものはどんな家の中でも、どんな組織の中にも、ろうそくの光、月光、星の光などによって入り込むことができる、という少々邪悪な意図から考えられたものでした」。

 

 

ヴィクトリア朝の悲惨な学校】 

この展覧会ではディケンズが取り上げた多くの問題について展示されている。

それらがしばしば虐げられた子供たちとしてディケンズの小説に登場するのである。

 

たとえば教育改革について、ディケンズがヨークシャーにあった全寮制の学校を訪れたときのことが触れられている。

このとき見た学校の様子が、のちの小説『ニコラス・ニックルビー』で「Dotheboys Hall」として登場する。

 

彼が出会った人の中には、15年前に起訴されているにもかかわらずいまだに校長先生を続けている人もいた。

この校長は学校の凶悪な環境のせいで2人の少年が視力を失ったため、訴えられたのである。

 

また「Bowes Academy」という学校の広告には、子供を(医療費を除き)わずか年間20ギニー(※当時の英国通貨)で受け入れる、と書かれている。

加えて、恐ろしい一文がそこに付け加えられている。

「ご両親のご希望がない限り、休暇は一切与えません」。

 

 

 

www.theguardian.com