心の健康のためにはやはり読書が一番
以下は Germaine Leece というセラピストがイギリスの新聞「The Guardian」に寄せたエッセイの要約。
読書がいかに心の健康に役立つかが述べられていて興味深い。
文学が人を慰め、癒し、心を豊かにしてくれる、ということは、実は紀元前2000年の昔から認められている。
ギリシャ神話に出てくる神「アポロ」が医術と詩歌の両方をつかさどる神であるというのは、なにも偶然ではない。
ルネッサンス期のエッセイスト、ミッシェル・ド・モンテーニュは読書をセラピーの方法として用いることができる、と唱えた最も優れた人物の一人である。
モンテーニュによると、さみしさを癒すためには3つの方法が考えられる。
それは:恋人をつくる。友達を持つ。そして、読書をする。
このうち、恋愛に走るのは逃げるのと同じであり、結局裏切られることも多い。
友情は恋愛関係よりはましだが、常にどちらかの死で終わるものだ。
だから人生を通して続くセラピーのためには、文学をパートナーにすることが必要である。
文学は魂を癒すものであると考えたギリシャ人やローマ人たちは、なぜ正しかったのだろうか?
なぜモンテーニュは、私たちが書籍と生涯にわたる関係を続けることができると信じていたのだろうか?
物語というものは、歴史と同時に誕生した。
物語は人間とはどういうものかを教え、過去を考える文脈を示し、未来への視点を与えてくれる。
物語の語り手は、ストレスに耐え続ける私たちの心の対話に声を与え、私たちを現実世界から物語の世界へと導いてくれる。
逆説的だが、物語を読むときは現実世界から逃げているように感じていながら、実は私たち自身の内面に深く入り込んで行くものである。
感情に言葉を与えることは難しい。
だから作家という存在が必要なのである。
作家たちの仕事は、私たちに感情の普遍性と永久性を教え、自分たちの感情をよりよく理解する手助けをしてくれる。
では、今のあなたを育てた物語は何だろうか?
これは考えるに値する質問だ。
この「物語による育成」は意識下で行われるものだからだ。
自分がどんな物語で育ってきたかをよく考え、それを意識の上に持ってくることで、これから読むものに新たな方向付けができるだろう。
そしてこれからの自分の人生を「物語」として読んでゆき、より充実した人生を送り、より正しく自分の生涯を理解できるようになるだろう。
古代ギリシャ人やローマ人たちは、読書が私たちの精神を向上させるということをすでに知っていた、と言われている。
イギリスのサセックス大学が2009年に行った研究によると、読書はストレスを68%軽減させるという結果が発表された。
読書は、音楽や散歩・お茶の時間などよりも神経を落ち着かせる効果が高く、6分間の黙読だけで心拍数が下がり筋肉の緊張がほぐれる、という。
また2013年に行われた研究によると、小説を読む人はより他人に共感できるようになる、という結果が出ている。
小説を読んでいると、頭が別の場所に連れてゆかれ、その場の登場人物と自分を関連付けることができるようになるからだ。
ほかの研究では、読書が睡眠の質を向上させ、軽い症状であればウツや心配性も和らげてくれる、という結果も出ている。