アルベール・カミュ『ペスト』 あらすじ

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『ペスト』はアルジェリアのオランという町が舞台となっている。

 

ある年の4月、大量のネズミが路上に現れ死んでいくのが発見されるようになる。静かな恐怖が市民たちを襲い、地元新聞は対策の必要を訴え始める。その後しばらくたってから、役所はネズミの収集と火葬を開始した。

 

そのころ、医師リウーの暮らす建物で門番をしているミッシェル老人が、高熱を発して死亡する。これと同様の症例がオラン市内のあちらこちらに現れるようになった。

 

医師リウーの同僚であるカステルは、これが腺ペストであることを確信する。 カステルとリウーは、ペストの疑いに対して真剣に取り組もうとしない役所やほかの医師たちに対して緊急の処置をするよう訴える。しかし役所が対策を始めたのは、この伝染病がオランを完全に襲ってからだった。

 

市全体が封鎖され、市民たちは愛する人たちを離れ離れになり、その離別がいつになったら終わるのか分からない状況に追い込まれてしまう。

 

 

 

こういった状況の中、神父パヌルーは教会を訪れる信者たち対して厳格な説教を行い、「このペストはオランの持つ罪に対する神からの罰である」と説いた。

 

一方、新聞記者レイモン・ランベールはパリにいる妻のもとに戻ろうと、オランからの脱出を請願するが、当局が許可してくれない。そこでランベールは、犯罪歴のあるコタールという人物と連絡を取り、彼の持つ裏社会とのつながりを利用して違法な方法でのオラン脱出を試みようとした。

 

そのころ医師リウー、彼と共にペスト対策に奔走するタルー、作家を志すグランたちは、ペストの脅威にさらされながらもオランの惨状とたたかい続けていた。

 

ランベールは違法ルートによる脱出計画を立て、実行は目前に迫った。そのときランベールは、リウーの妻も(ペストではない)ある病気のために転地療養中であり、夫婦離れ離れになっていることを聞かされる。ランベールは実行直前で脱出を取りやめ、リウーたちとともにペストとたたかう決心をした。

 

コタールは犯罪歴のある人物で、今まで逮捕・投獄の恐怖に苦しんでいた。そんな彼はペストのまん延でオランの市民たちが混乱する様子を見て、恐怖に苦しんでいるのが自分一人でないことを感じ、安心を覚えていたのだった。

 

さらにコタールは、封鎖されたオランと外部との間で行われる密輸に手を出し、多額の富を貯えていた。

 

隔離状態が数か月にわたった結果、オラン市民の多くは自分ひとりの苦しみだけに取りつかれた状態を脱し、ペストがオラン市民全体に関わる災難であると考えるようになる。そして市民たちは各自が社会的責任のもとで、ペストに対抗する活動に参加するようになった。

 

そのころ一市民であるオトン氏の幼い息子がペストに感染し、長期間の苦しみののち死亡した。リウー医師はパヌルー神父に対し、オトンの息子は何の罪も負っていないのに犠牲になったのだ、と声を荒げる。

 

パヌルー神父はオトンの息子の死にショックを受け、あらためて説教を行い、このペストがオラン市民の罪に対する神からの罰であるという最初の説教を訂正する。そしてクリスチャンは、神についてすべてを信じるか、またはすべてを信じないか、どちらかを選ばなくてはならないと説いた。

 

そのパヌルー神父もまたペストに侵されるが、医師の診察を拒み、神の手に自分の運命のすべてをゆだねる。そして十字架を握りしめながら息を引き取った。

 

しかし、亡くなったパヌルー神父を調べたリウー医師は、その症状が今までのペストとは異なることに気づく。そしてついにペストの大流行にも終わりが訪れたのである。

 

すると犯罪人コタールは、ふたたび自分だけが恐怖に苦しむことになるのを感じ、銃の乱射騒ぎを起こす。また作家志望のグランはペストで苦しんでいたが回復し、新しい人生を始めることを誓う。

 

こうしてペスト流行が衰え始めたそのタイミングで、今まで医師リウーとともにペスト対策に奔走してきたタルーがペストに感染し、死亡する。

 

オランの封鎖が解かれると、新聞記者ランベールの妻は彼のもとにやってきて再会を果たす。その一方で、リウー医師は彼の妻が療養先で亡くなったことを知らされた。

 

オランの市民は通常生活に戻っていった。しかしリウーは、ペストとの戦いは終わっていないという。ペスト菌の微生物は何年間も活動を休止したまま潜伏し、いつでも復活する可能性があるからだった。

 

<文庫本>

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